前回の(1)では、
【170センチ越え・90キロで、
ダサくてブサイクで地味でデブな中年の、
とうの昔に女として見られなくなったオバさんが、
貧乏脱出のために熟女風俗嬢になり、
数か月で老いも若きも関係なく、男性をトリコにする人気嬢に変身し、
とある人物と運命の出会いを果たし、使命に気づく】
という、
トンデモストーリーの冒頭、
【ワタシ、風俗嬢になります!】
と決意したところまでお話ししました。
今回は、「なる!」と決めた後のことをお話しします。
<前回のあらすじ>
とっても大柄、仕事に家事に介護に・・・
と奔走していて「オンナ」であることを捨て去り必死だった中年のわたし。
家族が一度に病に倒れ、実家の親もとうとう、入院していた病院から
「自宅介護か、施設へ移ってください(意訳:出ていってください)」
という宣告を受けてしまいます。
自分の給料だけでは、生活していくのも到底ムリムリ!
今から稼がないといけないのは、家族の入院治療代&生活費&母の施設利用料!
そしてわたしは、風俗で働くことを決意します。
171センチ90キロ、風俗嬢始めます(2)
はじめての面接申し込み
格安スマホでネットをあさると、
それはそれはたくさん、「高収入」「稼げる」とかかれたサイトが、いろいろ出てきました。
そこで見たのは、ナイトワークの紹介ポータルサイトです。
このナイトワークは、水商売ではありません。
風俗のほうです。
日給6万円保証とか、日払いとか、魅力的な事が書かれています。
ただ、掲載されている写真は、
顔にボカシが入っていても、一部隠れていても、
若くて魅力的で、誰が見てもかわいいと思えるような、きれいな女性ばかりでした。
(・・・若くてきれいで、スタイルの良い女の子だけよね。そりゃそうだ、いつだってもてはやされるのは、若くてきれいな人ばかり)
わかくてきれいな女の人しか選ばれない世界。
そんなのわかっていました。
だから、
「はたらこう!なんでもしよう」
↓
「でもお酒飲めない・美人じゃない・話上手じゃない」
↓
「勇気を出そう!覚悟しよう!風俗の世界に入ろう。そして、なんとか頑張って、生計を立てるんだ」
↓
「でもやっぱり自分には無理!」
の無限ループを1か月ぐるぐるしてました。
思い切って決めたものの、
踏み込めないのです。
やってもムダだ!という声がどこからか、いつでも聞こえてきました。
ところが、ときおりちらほらと、
「採用率100%」「40代以上OK」「ぽっちゃり・ミケポ大歓迎」
という文字が見えます。
(※ミケポ=体重3ケタのこと。つまり、100キロ以上の女の子のことです)
(もしや・・わたしでもだいじょうぶ?)
そう思ったわたしは、ポータルサイトをなめるように見ました。
すると、
「太っている女性しかいないお店」
というのが、あるではありませんか!
しかも、そこそこたくさん・・・。
太っている女性しかいないなら、太っててOK・・・ってことだよね???
しかし、じゃあすぐに連絡しよう、と言う気持ちにもなれませんでした。
(こういうお店って、やっぱりコワイ人とか出てくるのかな・・・)
(きれいなこと書いてあるけど、やっぱり危ないのかしら・・)
やると決めてから数時間、「電話したくない」「LINEもつなぎたくない」と思い、
サイトをしらみつぶしに見て、
やっと「メールでの問い合わせOK」というリンクを見つけました。
メールなら、
フリーアドレス取っておけば、いざとなったときアカウント削除したら大丈夫・・・
そう思って、フリーメルアドを入力し、
応募のメールを送りました。
申し込み完了!しかしその店は・・・
ところが、メール送っても、ぜんぜん返事が来やしません。
しかし、店のHPは更新されています。
パソコンなどの作業は行われているのに、メール見ないってどういうこと・・・
昼は会社員をしていましたので、
「仕事でメールを使うことがあるなら、
パソコン立ち上げたときメールのチェックはする」と言うのが常識だと思っていました。
4日後、 ようやく返信がありました。
件名もなしで、本文のみ。
開いて読んでみると
「メール見ないから!LINEから応募しなおして」
これだけです。たったこれだけ。
(え、えらそう・・・)
(・・・って、メール見たから「LINEして」って言ってきたんでしょ・・・)
(ヘンなの・・・!)
じつは、この殺風景な返事がくるまでに、4日もたっていたので、
「おことわりっていうことなのかな」
「もともとそんな店、ないのかな」
とくらーい気持ちになりはじめていました。
もうダメなんだと思い、ほかの店も探していたのです。
わたしには時間がなくて、一日も早く稼がないといけないのですから・・・
結局のところ、このお店の公式LINEを登録し、
そこから面接について話をしたのですが、
いろいろ不安な点が多くあり、
身の危険を感じたので、面接を受けることを辞退しました。

あとからわかったのですが、
ポータルサイトに載っているからと言って、
すべてがマトモな、安全なお店!とは限りません。
ヒドイところは、ほんとにヒドく、
「ここでお仕事しよう」とやってきた女性たちを、
言葉は悪いですが、オモチャのように扱うところもあります。(趣味講習とか)
別記事で、見分け方をお伝えしますね^^
お店探し再び
面接を申し込んでも返事がないその間、
わたしはほかの店も探していました。
1つ目のお店を受けたところで、採用になるかどうかはワカリマセン。
これは、一般的な就職活動でも同じですよね。
一つの結果がわかるまで、ほかを受けない、という事はまずありませんし、
時間は有効に使わないと!
ガールズへ〇ンをみていると、
「自分みたいなジミそうな嬢・スタイルが別によくない嬢、年配の嬢がおおい店」がありました。
だいたいは、年齢よりお若く見える素敵な大人の女性の写真が並んでいます。
ところがです。
8人に1人くらい、
わたしみたいな、サエないおばさんっぽい見た目の女性が、
混じっているではありませんか。
(これはもしかしたらもしかして、わたしでもいけないことはないんじゃないの・・・)
何人か、スリーサイズがほぼ同じな女性もいます。
(この体型で、イケるの?選ばれるの?)
そして、
「出勤情報」を見ると、
【スリーサイズ全部90前後というプロポーションのアラフィフ女性に、予約が入っている】
のです。
ちなみのそのころのわたしのスペックは
シティヘブン風に書くと
T171 B113(I) W83 H110
・・・とんでもないサイズ感ですよね・・・
ウエストが、一般の女性のバストのサイズじゃないですか・・・
数字にすると、ヘビー級のレスラーのようです。
数字にしなくても、見た目は全くの、レスラーです。
力仕事も結構していたので、体重のわりにかなりの筋肉質で、
第一印象は「強そう」とか「何かスポーツを?」というものばかりでした。
美しいとか、かわいいとか、女性らしいとかは言われたことなどありません。
しいて言えば、小柄な女性から
「カッコイイ」
と言われるくらい。
(女のカッコイイなんて、モデル体型の人以外は、誉め言葉じゃないんだから・・・)
若いころは、コンプレックスのカタマリで、
背が高いのを指摘されるや否や、とたんに
イライライライライライラモヤモヤモヤモヤ
が始まっていました。
(背が高いなんて、誉め言葉じゃないのに)
すでに、コンプレックスだけで出来上がっているわたしには、
どんな誉め言葉も、けなし言葉に聞こえてしまっていたのです。
そんな経験から、自分のことは、
女じゃないと思われて当然の見た目だと思っていたけれど、
「スリーサイズ全部90でも、男性に選ばれている女性がいる」
「アラフィフでも、男性からオンナ扱いをしてもらえる女性は、たくさんいる」
その事実で、
なぜかよくわからない、勇気のようなものがわいてきました。
よし、この店にも問い合わせをしてみよう。
わたしはときどき、理解不可能な思い切りの良さを発揮します。
しかも、一度しようと思ったら、できなくても走り出してしまうような、
控えめなのか大胆なのか、自分でもよくわからない行動パターンをしていたと思います。
面接申し込み、ふたたび
そのお店にも、思い切ってメールをしてみることにしました。
「私の顔はこんなんですが、お客様はがっかりしませんか?
おまけに身長は170センチ超えているんです。
体重だって、それはもうひどいんです。
太ってるとかぽっちゃりとか、でぶとかの範囲を超えています。
面接していただきたいですが、
もし、お客様にとても見せることができないレベルでしたら、
面接も拒否していただいて構いません」
と、本文を入力しました。
化粧なんか、ここしばらくいそがしさにかまけて、全然していません。
化粧品も、何年も買っていないので、
古いものを引っ張り出して、
キレイになっているかどうかは二の次で、
とりあえず、顔に塗りたくりました。
おそろしいことに、
このころのわたしは、
似合う色とか、きれいに見える色とかではなく、
ファンデーションでさえ、そのとき特売だった商品を購入していたため、
今思うと、色がチグハグ、
顔と体が別の人、合成写真みたいに、
非常にヘタクソでダサいメイクだったと思います。
どうしてそんな似合わないメイクでも外を歩けてしまっていたのかと言うと、
「メイクをしていることそのものが一つのマナー」で、
「きれいに見えるかどうかは、二の次どころか、まったく気にしていなかった」からのです。
(今考えると、なんてオソロシイ)
それは、
「何をぬっても、わたしの顔はたいしてよくならない」
「もともと私の見た目は、よくないから」
という思い込みから。
「化粧をしても、周りからの印象は変わらないから」
「裸で人前に出たらマナー違反だから、服を着る。
それと同じで、化粧自体がエチケットだから」
そんな気持ちで、化粧をしていました。
髪型も、ショートカットで中学生のよう。
長さも足りず、
いまさらオシャレな髪型なんてできません。
とりあえず、整髪料をぬってみただけの、適当な髪型です。
おそらく、よいところは、
40歳になっても白髪が1本もなかったところ、
カラーやパーマなどをしたことがなく、健康そのものの髪だったこと。
わたしはそのテキトーメイクをして、
スマホのインカメで撮影をしました。
ひどい自撮りです。
添付した写真には、
わたしが大嫌いで大嫌いで仕方がない、
野暮ったい自分の顔がうつっていました。
頑張ってお化粧して撮った顔写真をつけて、応募のメールを送信しました。
自分の見た目に、まったくもって自信がなかったので、
メール送信後、ずっと考えていました。
「メールエラーで届いてなかったらいいのに」
「『残念ながら今は募集していません』って返信きたらいいのに」
面接をしないと始まらないのに、
始まりたくない気持ちがうろうろします。
そしたら5分後、「大丈夫ですよ!一度面接に来てください」と・・・
頭の中でグルグルまわる、昔の嫌な思い出
返信では、
店長と思われる方が、懇切丁寧に、
私の質問に答えてくださいました。
面接は、カフェか喫茶店か、ファミレスのような公共の場所で行うこと。
面接をしたからと言って、入店を強制はしないということ。
週1とか、月1とかの出勤でもいいけれど、
できれば定期的に出勤をしたほうがいい、ということ。
最初に面接を申し込んだお店と比べると、
天と地くらいに感じる対応の違いに、一週間後の面接を決めました。
面接の日のことは、もう数年も前のことなのに、いまでもはっきり覚えています。
面接の場所として指定されたファミレスに向かう車の中、
私の頭の中ではいやな思い出が、
パラパラ漫画のように回転していました。
自宅から、指定の場所までは2時間弱かかります。
映画と同じくらいの時間、
自分の頭の中でぐるぐる回る、昔のいやな思い出・・・
中学生の時、貧乏で、
食生活も衛生面もまともじゃない暮らしで、
吹き出物が化膿して、透明な黄色い汁を顔から流しながら、
痛みに耐え、ただひたすらに
「偉くなって、いい仕事に就くんだ!そして家族を楽にする」
と言う気持ちだけで通っていた中学校。
かさぶたと、生傷だらけの顔を気持ち悪がられて、クラス全員から避けられていて、
いつも一人だった学校生活。
そんな中、なぜか、クラスの「カッコイイグループ」の中の男の子が「つきあってください」と告白をしてきました。
意外過ぎて、上手く返事できずに断った形になったのだけれど、
クラスメイト達は後日、あざ笑うような目で私を見てきたのです。
理由が、日をあけずにわかりました。
その告白は、思春期の男の子たちが面白半分でよくやる、罰ゲームだったのです。
「あんなブスのくせに、
いっちょまえに断ってきたぜ、笑える!」
「あんなデカイ女は嫌いだよ!」
さんざん笑いものにされ、指をさされ
でも誰にもいえず、一人で悔し泣きした思い出・・・
罰ゲームで他人を使う根性に、吐き気がしました。
それ以来、わたしはオトコが、とくに「見た目の良い若い男」が大嫌いになりました。
そして大学生のころ。
私と同じくらいの身長で、スレンダーなクラスメイトと一緒にいたとき、
また別のクラスメイトから言われたことがちらつきました。
身長170センチくらいの私たちを見て、150センチくらいの彼女は
「身長が高いのってステキね、カッコイイ」
と言いました。
わたしは、こんな身長を褒めてくれる人がいるんだと、
ちょっとニンマリしていたところ
「ああ、あなたのことじゃないのよ!なに喜んでるの?
こっちの子がカッコイイってこと。
アンタ大きいだけじゃないの。
細くて背が高いのが、ステキってこと。
アンタを褒めたんじゃないわよ」
もちろん、彼女は笑っていたので、冗談のつもりだったのでしょう。
しかしわたしは恥ずかしくて、消え入りたくなってしまいました。
(自分が褒められたと思って、カンチガイした!!!)
(なんで自分が褒められたなんて思った?!)
(褒められるようなところ、わたしにないってわかっていたのに)
(でも、友達なら、カンチガイさせてくれたままだっていいじゃない・・・
それを・・・
こんな風にバカにされるなんて)
本当は悔しかったのだから、
「失礼な!」と言って、怒ればよかったのでしょう。
そのころのわたしは、動かせない事実だったから、
怒ることができず、言い返すこともできず、
「ごめんなさい」
と謝って、その場からダッシュで逃げました・・・
二人がケラケラ笑い、
「そんなほんとの事いっちゃダメじゃないウフフ」
などと楽しそうに話すコトバを、聞きながら・・・
それ以来、わたしは「わかい女」も苦手になりました。
(そうだ、自分は、背が高い女の中でも、ダメなほうの女なんだ)
(そうだ、わたしの見た目のことを良いなんていう人間は、いないんだ)
(だから、自分の方向にかけられた誉め言葉は、
他の誰かへのことばだから、
ほんとは自分への言葉じゃないから、
聞かなかったことにしなければ、ならないんだ)
(褒められても、それは、まぼろしだ。
気のせいだ。気のせいなんだ!!!信じるな!)
いつもそう思っていました。
そして、今。
わたしは、これから行われる面接で、
どんな女かを判定されるのです。
どんな言葉で、拒否されるんだろう。
なんで、ここにきちゃったんだろう。
いまから、わたしは、絶対に見た目を否定される。
(なんでこんなふうなすがたで、うまれてきたの)
(おかあさん、「年頃になったらだれでもきれいになるから」っていってくれたけど、
わたしは、ちっともきれいにならなかったじゃないの。
娘十八、番茶も出花。
その18歳の時でさえ全然だったのに、
40歳の今、確実にそのころの自分より、劣っている)
いろんな面接を受けたけれど、このときの面接が一番緊張しました。
なぜなら、ふつうの就職活動では、
顔や見た目の美醜は、合否に直接は関係しないからです。
でも、いまから行われる面接は、そうじゃない。
今後のことを思うと全身汗びっしょりでした。
待ち合わせのファミレスの駐車場に到着したら、
教えてもらっていた、店長の直通電話を入れるように言われていたので、かけました。
すると、
「遠いところ来てくださってありがとうございます。
それでは、中でお茶をしながら、話をしましょう。
いまわたしが、ファミレスの入り口に行きますので、来てくださいますか?
グレーのスーツを着ていますので」
そして、少し離れたところにとめてあった黄色いオシャレな外車から、
すらりとした、仕事のできそうな男性が下りて行ったではありませんか。
(ええ・・・風俗の店長って、あんな一般企業のお偉いさんみたいなの?!
もっとチャラそうな悪そうな人かと思った・・・
でも電話応対は、普通の会社みたいだったし・・・)
すこし、ホッとしました。普通に話が出来そうです。
それと同時に、
(こんなに印象のいい男性から、見た目けなされたり、
「その見た目でここに来られても・・・」
って言われたら、『上げて落とす』みたいに立ち直れないかもしれないなぁ・・・)
などと、考えていました。
(続きます)