171センチ90キロ、風俗嬢始めます(4)

ストーリー・コラム

前回の(3)では、

【170センチ越え・90キロで、

ダサくてブサイクで地味でデブな中年の、

とうの昔に女として見られなくなったオバさんが、

貧乏脱出のために熟女風俗嬢になり、

数か月で老いも若きも関係なく、男性をトリコにする人気嬢に変身し、

とある人物と運命の出会いを果たし、使命に気づく】

という、

トンデモストーリーの初めの部分、

【ワタシ、風俗嬢になります!】

と決意し、震えながら(?)面接をうけ、

厳しいことをいわれながらも、入店を決意したところまでお話ししました。

今回は、入店してからのことをお話しします。


<前回のあらすじ>

とっても大柄、仕事に家事に介護に・・・

と奔走していて「オンナ」であることを捨て去り必死だった中年のわたし。

家族の入院治療代&生活費&母の施設利用料がほしかったわたしは、

風俗で働くことを決意!

面接で感触の良かったお店でしたが、

店長からの手厳しい評価にガクゼン、心のなかで大号泣します。

でも、やるしかない!と入店を決めました。


171センチ90キロ、風俗嬢始めます(4)

近くてとおい事務所

コインパーキングまで車を並べて向かい、

自分の車を止めてから、

わたしは店長の車に乗り込みました。

「事務所は、ここから近いんですよ。直線距離だと5分もかからないんですけど、

このあたり、一方通行とかおおいですから・・・

ちょっと道がややこしいので、時間はちょっとかかるかもです」

たしかに、街の中はおもっていたより細い道が多く、

一方通行も多い感じがしました。

しかし、後部座席で揺られながら、わたしはなんとなく違和感を感じました。

(なんだか、わざと回り道をしているみたい・・・)

車は、高架下を何回もくぐりながら、アップダウンもカーブも多い道を進んでいきます。

(やっぱり回り道をしている気がする)

でも、1軒目でのお店の時のような不安な感じはありませんでした。

運転の間も、店長はいろいろと話をしてくれました。

このお店は1年前に、この地に支店としてオープンしたという事。

全国チェーンだから、最初のころは他のお店のキャストさんがヘルプできてくれたこと。

今向かっている事務所は、オフィスと、キャストが過ごす待機室は別になっていて、

キャストさんにはとっても評判がいいこと・・・

それから、事務所が入っているビルは、すこし立地条件が悪いこと。

こんな業界だから、オフィスを貸してくれる大家さんが見つからず苦労したこと。

そして、事務所の入っているビルには、ほかに何店舗かの風俗店事務所が入っていて、

他のお店の女の子は、辞めたくても辞めれずに、

大きな問題が起こって、警察沙汰にまでなったこと・・・

・・・

グルグルを同じところを回っているように感じているうちに、

古びたビルの前につきました。

そこで、わたしは気づいてしまいました。

(ほんとに近くだったんだ)と。

というのも、

わたしは女性にしては珍しく、方向感覚が割とよく、

地図もよく読めるタイプだったため、

「ぐるぐるまわりながら、わざと遠回りして目的地に移動している」

「最初のファミレスから、ほんとうにちかい、途中で見えていたあのビルに事務所があるんだ」

と気づいたのです。

(たしかに、この仕事をしている場所を、はっきりと覚えてほしくはないんだろうなあ)

この仕事をすると、店舗型でない限り、

「自分のお店の場所を誰にも言わないように」と念を押されます。

店舗型のお店は、繁華街にありますが、

無店舗型のお店の事務所は、繁華街にあることはあまりないようです。

外から見ても、それとわからないように、

まるで普通の会社のような感じで営業しています。

事務所の場所が周辺にばれてしまうと、

働くキャストが嫌がらせされることも大いにあるでしょうから・・・

古びたエレベーター

雑居ビルにつくと、ふるびたエレベーターに案内されました。

「ここの3Fですので、ボタンを押して上がってください。わたしは階段でいきますので」

エレベーターは、確かに年季が入っていて、とても狭い・・・ですが、2人は乗れる大きさでした。

しかし店長は、「いいから乗ってください」と伝えると、ダッシュでのぼっていきました。

キツネにつままれたヘンな気持ちでエレベーターに入った瞬間、

エレベーターのカゴが・・・

20センチくらい、ギューンと下がったではありませんか・・・

あまりの古さに、今にも故障寸前だったのかもしれません。

でも、中のほうに入ってみてみると

「3人用」

と書いてあります。

それでも店長がわたしと一緒のエレベーターに乗らなかったのは・・・ 

はっきりと店長は言わなかったけれども、

二人でのったら積載量ギリギリと思った

からかもしれない・・・と思いました。

いまでこそ、そのエレベーターに二人で乗ったら、ギュウギュウで狭いだけでなく、

ほんとうにワイヤーが切れて落ちる危険しかないだろうなと納得ですが、

当時のわたしは、もういちど改めて太っていることを指摘されたみたいで、

情けなさでいっぱいでした。

(実際太ってるんですけどね💦)

とても動くのがおそいエレベーターが3Fについたとき、

店長はすでにエレベーターの前に到着していて、

息も上がっていなかったのでした。

エレベーターの横には廊下があり、二つの扉がありました。

「手前は待機室です。あとでご案内しますからね。

まずは、奥の事務所に行きましょう」

もうひとりのわたしの名前

中に入ると、デスクがいくつかあり、

スタッフの方はみんなパソコンで何やら作業をしているところでした。

店長と私に気づくと、スタッフの皆さんは一斉に立ち上がり

「お疲れ様です」

とあいさつをしました。

(ふつうの会社より、きっちりしている・・・)

と思いました。

「今日から入店する方です。未経験なので、例の物をわたしてくださいね」

と店長が言うと、スタッフさんは2冊の本を出してきました。

「うちは、講習はしません。この2冊の本を読んでください。

それから、この紙に書いてあるアドレスにアクセスをして、

ブックマークをしてくださいね」

2冊の本は、接客方法についての解説と、Q&Aが書いてありました。

「さて・・・

こういうお店で働くためには、

もうひとりの自分になっていただきます。

お店で働いている間は、本名とはちがう名前を使います。

何か、希望の名前はありますか?」

希望の名前どころか、

「別の名前を付けないといけない」ということもピンと来ていなかった私は、

店長にいくつか候補を上げていただくことにしました。

「わたしがこんななので、おとなしめの名前にしてほしいです」

そういうと、店長は10個の候補を上げました。

10個の名前の真ん中あたりに書いてあった名前を、わたしは選びました。

ほかにもいろいろな名前がありましたが、

なんとなく懐かしい感じがしたので、

「朱実(あけみ)」

を選ぶことにしました。

いきなり、だけどあたりまえのお茶引き

「今日、もう体験入店していきますか?」

と聞かれ、そのままお店に残った私。

すぐに写真の撮影をし、お店のページにのせてもらいました。

しかし・・・

あたりまえのことですが、

いきなり、それなり以下の太った何のとりえもない女を

「今日入店した、新人さんです!」

と売り出したところで、目に留まるわけがありません。

スタッフさんも、オススメしたくなるようなキャストではありません。

だから、

その日のうちに体験という形で入店しましたが、

一日目は一回も仕事に行くことはできませんでした。

(うわあ・・・なさけない)

交通費だけを頂いて、

駅まで送ってもらう車の中で泣きながら帰りました。

何もしていないのに、交通費をお店からいただいて、

迷惑をかけてしまった・・・というのは、建前。

自分が稼げない=女としての魅力が全くないことが明らかになった

ことが悲しいのはもちろん、

店のお荷物になってしまった情けなさでいっぱいになりました。

店長から

「せっかく来てもらったのに、

私どもも頑張ったのですがお客様を付けられず、

申し訳ありませんでした。

次の時はお客様を紹介できるようにしますので、

また出勤できるときがあれば教えてください」

と言われ、

号泣しながら

「犯罪や、

お店のルールを破ること以外なら、

何でもやります。

わたしに売れる方法をおしえてください」

とお願いしました。

号泣したのは、お店のスタッフさんの情けもさることながら、

自分が無価値だと、いやというほどわかってしまったからです。

しかし、

「誰一人接客していない状態で、できるかできないか判断するのは無意味」

とも思っていました。

デブでブスでババアだったわたしの取柄と、風俗で生かすことができた特技

デブでブスでババアだったわたしの取柄と言えば、

自分の身に辛いことが起こってもそこそこまでなら我慢できる

忍耐力

と、

痛みに強いこと

そして

潔癖症でないこと

あまり考えずに、行動に移せること(意外と思い切りが良い)

です。

そもそも、わたしに、同世代からモテるような魅力は、昔からありません。

ですが、わたしには、ちょっと不思議な強みがありました。

20代のころ、60代以上の男性に異様なくらいモテた

という実績が。

そして、当時も、その年代の男性を見ても、イヤだなぁと思ったこともなく、

全然、男性として見ることができました。

ということは、

「今40歳だから・・・

同世代の男性には、わたしはガッカリされるかもしれないけれど、

70代以上の男性だったら、もしかすると、

わたしのことをいいと思ってくれる人も、いるかもしれない」

さらに、もう一つ。

「つらいことはもう一人の自分が感じていることであり、自分本体は実は痛みを感じていない」

というように、

自分の肉体と、自分の心が別モノだと考えることができることでした。

「たとえ風俗でお客さんからひどいことをいわれたり、されたりしたとしても、

それはわたしが持っている『カラダ』がされていることであり、

わたしの『ココロ』がされているわけではないから、大丈夫だろう」という考えだった。

(やられているのは自分じゃなく他人、というふうに、もう一人の自分を自分が上から見ているような考え方)

そんな考えができるくらい、

幼いころから、肉親のそばで暮らすことができず、

親戚を転々としてきて、そして周りになじめず避けられいじめられていたわたしは、

幼いころから、

嫌なことは自分じゃなく、他人が受けていること

と、切り離して生きるクセができていました。

もともとその考え方ができたので、

源氏名で「朱実」を名乗っているときには、よけいに

「朱実がされていることは、自分がされていることではない」

と思う事が出来ました。

源氏名を名乗ったら、もう本名とは違う【別人】です。

お店に入り、源氏名の「朱実さん」になった瞬間から、

お客様が自分にしたことは「自分じゃなく【朱実さん】にしたこと」。

お客様が「このブサイク!」と言ったら、それは私ではなく【朱実さん】が言われたこと。

だから私の事ではない、という考え方です。

コレが出来ず、お客様からのことばを真に受けていると、病んでしまいますよね・・・

思えば・・・

とても幼い時から、

わたしはどこにいても「ここは自分がいていい場所ではない」ように感じており、

いつまでもこの地球上に間借りしているような気持ちでいました。

どんなにながくても、

たかだか30000日しか存在できない体のことを思うと、

ちょっとした幸せとか不幸とか、自分に起こっていることであればどうでもよかったんですね。

30000日たたないうちに、わたしはここから消えることを思うと、

幸不幸はただただ、うたかたの泡のように、

なにごともなく私の体の上を過ぎていくだけの物でした。

ただ、自分以外になにか良くないことがあるときには、

自分は何かしないといけない、という義務感でいっぱいでした。

そんな気持ちを、ネット上で女性を選ぶ男性には知られることもなく、

案の定、交通費だけ持って帰る日が続きました。

(続きます)

朱実(あけみ)

人生がけっぷちの中年女性が一念発起、夜のお店に!

お茶引き不人気嬢が3か月で予約困難嬢にキセキの大変身!

人間不信になりメンタル崩壊した過去から立ち直り、
25キロ痩せ身も心も生まれ変わった私が、
これまでの経験から学んできたすべてのことを、お伝えします。

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