前回の(4)では、
【170センチ越え・90キロで、
ダサくてブサイクで地味でデブな中年の、
とうの昔に女として見られなくなったオバさんが、
貧乏脱出のために熟女風俗嬢になり、
数か月で老いも若きも関係なく、男性をトリコにする人気嬢に変身し、
とある人物と運命の出会いを果たし、使命に気づく】
という、
トンデモストーリー、
【ワタシ、風俗嬢になります!】
と決意し、震えながら(?)面接をうけ、
厳しいことをいわれながらも、入店を決意したところまでお話ししました。
今回は、入店してからのことをお話しします。
今回のお話しには、性描写・性犯罪ワードが含まれています。
トラウマのある方は、読まないようにお願いいたします。
<前回のあらすじ>
家族の入院治療代&生活費&母の施設利用料がほしかったわたしは、
風俗で働くことを決意し、とうとう入店!
「朱実(あけみ)」という源氏名で働き始めましたが、
デブでブスで取柄がなかったわたしはお客様に選ばれず、
出勤しても一円も稼ぐことはできず、
時間をムダにすごして泣きながら帰宅するばかりでした・・・
171センチ90キロ、風俗嬢始めます(5)
新人キラー
風俗では、入店後しばらくの数か月は、
【新人期間】
という、一種のボーナスタイムとなっています。
新人だから、という理由だけで指名が増える時期なのですが、
寄ってくるのは【新人キラー】と呼ばれるお客様ばかりです。

【新人キラー】とは・・・
「何も知らない、経験が少ないキャストだから」と、
ルール違反の行為を「当たり前」「みんなしてる」と教えたり、
手荒く扱うお客さんのこと。
当然、新人期間に1回ポッキリしか指名しないタイプのお客さんで、
次会うことがないから、と余計に好き勝手気ままにしたり、
乱暴だったりします。
【新人キラー】に痛めつけられて、
初日で泣き泣き業界を去っていく嬢も大勢います。
新人キラーの存在を、店もよくわかっているので、
未経験の嬢には、一番最初には、
【常連の、優しいと評判な、紳士なお客様】
を会わせるようにします。
これは、当然「この仕事は危なくないよ、大丈夫だよ」と理解させるためです。
しかし、その最初のお客さま以降は、しばらくは【新人キラー】が続くのです。
わたしに入店してしばらく、新人と言われていた期間についたお客様は大変少なかったのに、
ほとんどがその【新人キラー】であったことを、今でも生々しく覚えています。
うがいはしない、シャワーは抵抗、ルール違反行為・・・
そして、暴言・・・
そんな、普段はやさしい男性かもしれませんが、性欲に支配されている乱暴者を何とかしなくてはいけません。
悲しいことに、デリヘルは、そばに頼れるスタッフはいません。
いても、助けに来てくれるかどうかは、別問題。
自分を守れるものは、自分だけ。
ですが、一応・・・
このお客様たちは、お金を払ってサービスを受けに来ているので、ましでしょう。
過去に、義務教育時代に集団レ●プにあったことを思い出しながら、
「あれよりまし、あれよりましだ・・・」
「まだ、話せばわかる相手だ」
と、言い聞かせながら、言葉を選び、なだめすかし、
神経をすり減らす日々でした。
たまにお客さんが付けば、7~8000円ほどを握りしめて、
疲れ切って家路につく週末でした。
やめるわけにはいかない、このお金が必要なんだ・・・
でも、いつまでこんな日々が、続くんだろう・・・
そんな気持ちで、帰りの列車に乗っていると、まわりの人々がシアワセそうで泣けてきます。
列車が町を離れ、にぎやかな灯りも少なくなって、
峠に差し掛かる間に、乗客はどんどん減り、
いつしか車両には、田舎者のわたしひとり。
店から頂いた、握りしめたお金を見つめていると、
勝手に涙が目からボトリボトリと落ちていくのでした。
風俗にくるお客さんは2パターン
風俗にくるお客さんには2パターンあります。
ただただ、いい女をつぎからつぎへと求め、刺激が欲しいタイプと、
自分をただそのまま受け入れてほしい、さびしいと、よりどころを求めているタイプが。
わたしは、前者のお客様は満足させることができません。
なぜなら、イイ女の見た目ではなかったから。
女性の顔にうるさいお客さんからは、
チェンジをくらい、接客すらできないことが多かったのです。

チェンジとは・・・
風俗では、基本的には直接顔を見てキャストを選ぶことはできません。
実際に会ったときにキャストがお客様の好みでなかった場合、
他の女性に変えてもらうことができるシステムです。
ただ、チェンジはお店にとっては面倒なことなので、
チェンジ料金が発生したり、
1回しかチェンジできないという決まりがあったり、
そもそもチェンジは不可と決まっている場合もあります。
そして、「チェンジ」はお客様が直接キャストに伝えるため、
双方にとってもストレスがたまります。
(気の弱いお客さんはチェンジができず、またキャストもチェンジを言われるとヘコみます)
会ってすぐ、お客様が残念そうな顔をするので、わたしはお客様の希望がすぐにわかりました。
(わたしの見た目が、気に入らないのだな)
お客様が口を開くまえに「チェンジなさいますか?」と聞くこともありました。
「お金を払う側なのに、損をすることはないんですよ」
「わたしの見た目で満足できない気持ちはわかりますよ。
満足できないと分かっているのに、お金を使うことはないですよ」
そう説得することもありました。
「これだけのお金があれば、ほかにもっと楽しいことができるかもしれませんよ」
「せっかくお金を使うのだから、自分が納得できる使い方をしてください」
そう説得することも、ありました。
わたしには、子供のころ、さまざまな場所でいじめられた経験があるので、
相手が自分のことを喜んでいないのを察知する能力だけが研ぎ澄まされていました。
顔がちょっと良くて、それに自信がある男は、
必然的に見た目の悪い女をさげすむ傾向があります。
これは、若い間だけではなく、年齢関係なく何歳の男でも、です。
傲慢と偏見で、自分より見た目レベルが下とみると、かんたんに、相手を見下してきます。
「きみは見た目が良くないんだから、人よりもっとサービスしないとね」
こんなふうに対面時に言われることもありました。
(顔の良いお客はやりにくい・・・・自分に自信のある男は、相手しづらいわ・・・)
「見た目が悪いから、サービスどれだけしても、ご満足いただけないと思います。
チェンジなさいますか」
と、震えながら提案しても、なぜかそういったお客さんは、このように言うんです。
「チェンジってお金かかるんでしょ?きみでいいよ」
ほとんどの場合、私に気を遣っているのではなく、
「気に入らないから、めいっぱいつかってやろう」
のような考え方にかわるのです。
例えば、見た目がキレイな嬢相手だったら、ご機嫌を取ったり、お話をしたり、
サービスがたいして良くなくても、見た目がいいからと甘い目で見たり・・・
しかし、見た目が良くないとどんなことが起こるかというと、
シャワーもうがいもなにもせずに、召し使いのようにこき使う
普段するのより5割り増しくらい、乱暴に扱う
ひどい場合は、嬢と関係ない、ほかの場所で感じたストレスを発散するかのように、
暴言を浴びせたり、暴力をふるうケースもあります。
どうしても、このお客さんの相手はムリだ、と感じたとき、
「だいじょうぶです。チェンジ料金、わたしが出しますので」
そう言って、チェンジ代2000円を自腹で出したこともありました。
そして、自分の店で美人と言われているキャストを教えたりもしました。
ほとんどの女性が、自分よりきれいだから、誰を教えても間違いではありませんでした。
チェンジ代を自腹で払うと、懐は痛かったが、爽快な気持ちになりました。一時的にですが・・・
一時的にすっきりするけど、
後から「なんで、【泥棒に追い銭】みたいなことしてんだろ・・・」と涙が流れました。
(40代になるまで、どんなことがあってもほとんど泣いたことのない私でしたが、入店してしばらくは、しょっちゅうダバダバと涙を流していました)
見た目が悪いだけで、
男性はこんなにアタリがキツイのか・・・
知っていたけど!!!
「きみは、見た目がイマイチだからね、しっかりサービスしてよ」
この場合の、【しっかりサービス】って、この業界にいたことがない女性は、
何のことかわからないでしょう・・・
丁寧なサービスのことではありません。ルール違反の過剰サービスのことです。
デリヘルなどの、ヘルスサービスでは、最後まではしません。
ですが、お客様が求めているのは
「顔がわるければ、ほかのサービスを」
ということで、ヘルスでの「過剰サービス」は、つまり・・・
「本番行為」を意味しているのです。
しかも、私くらいの年齢だと、それは、いわゆる【生本】と呼ばれるもので、
避妊具なしの性行為をさすのです。
(おまえは、生本をしてはじめてほかの女と同じだ。
でも、おれがおまえのような女に、それすらできるかどうか、わからんしな)
どうしたもんでしょう。
知りたくない情報が、アタマに飛び込んできます。
お客様の言いたいことが、顔色を見てわかってしまいます。
「勃ちもしない」
そういわれたことも、ありましたし、
直接言われたことがなくても、顔に書いてあることも多々ありました。
人の心が見えるのは本当に、不都合だ・・・
初めての満員御礼
通常、風俗嬢というものは、
新人期間にたくさんお客さんを付けてもらって、
そのお客さんに本指名(もういちど指名してもらうこと)を頂いて、仕事を増やしていきます。
だから、新人期間に頑張って、お客様に気に入ってもらうようにし、
新人キラーが一周した入店数か月後には、
「新人期間に来てもらった【新人キラー以外の】お客さんに戻ってきてもらう」
ことで稼ぎを得るようになります。
新人期間が過ぎると、新規のお客さんが減っていきますから、
お客さん自体の数は、減っていきます。
新人キラーでない、数少ないお客さんをいかに満足させ、また来ていただくか。
新人期間に頑張った成果が、数か月後に出るのです。
しかし、わたしは違いました。新人期間のお客様は少なく、
しかも新人マニアというだけで、当然気に入ってもらえることもなく、
入店から数か月が経過しました。
新人期間に来ていただいたお客様については、ほんの少ししか本指名を頂けませんでした。
ですが、3か月ほどたつと、状況が変わってきたのです。
自分をただそのまま受け入れてほしい、さびしいと、
よりどころを求めているタイプのお客様が増えてきました。
「キレイな嬢に雑に扱われて傷心のお客様」が私を指名するようになりました。
キレイな女に雑に扱われて傷つく男は、
いい男に雑に扱われて自分の存在価値を無くした女と同類なのです。
いわば、傷心のお客様の心は、傷心のわたしと同じ心。
3か月過ぎると、新人キラーのお客さんは、新人を一周し、また新たな新人をもとめていきます。
ですから、二度と出会うことは、ありません。
新人キラーのお客さんの波がすぎさると、
一気にお客様の質はよくなり、ひどいことをされることはなくなっていきました。
わたしのココロが女であることを認めてもらえない日が続きカラッポになったように、
お客さんであるところのオトコのプライドはいつでもズタズタに傷ついていて、
プライドの復活を求めてやってくるのだ
と気づきました。
大きな発見でした。
そして、そんなプライドを傷つけられて、いやしたいと私に会ってくださるお客様との関係の中、
もっと重大なことに気づきました。
40代を過ぎたら、女の価値は 見た目の比重が少なくなっていく
入店した当初は、
見た目がダメならテクニックが必要なのかもと、思っていました。
店長にも相談をしましたが、
「小手先のテクニックはいらない」
「テクニックでは、人はつなぎとめられない」
という答えでした。
在籍3か月目以降、とても少ないけれど、優しいお客さまばかりを接客するようになった私は、
今後の接客をどうしようか、考えました。
ありがたいことに、物静かだけれど、いろいろ教えてくださるお客さまばかりになっていました。
ひたすら、お客さんのことをわかろうとしました。
見た目で判断するお客様については、もう放っておくこととし、
「見た目より大事なことがあるんだよ」とおっしゃってくださるお客様に全力を注ぐことにしました。
すると・・・
そして、だんだんわたしの口コミコメントは不思議なことになってきました。
他の嬢のクチコミは「きれいでした!」「スタイルがよかった!」「プレイが上手い」
こんな感じだったのに、
わたしへのクチコミは
「あっという間でした」「幸せでした」「次に会えるまで、頑張って生きていようと思います」
わたしのような者といてシアワセを感じるなんて、なんて優しい人たちなんだろう・・・と思いました。
わたしは一緒にいて楽しいタイプでもないし、そこまでの幸せを与えることができた手ごたえもない。
実は、(今では「話が面白い」と言っていただけることも多いのですが)
わたしはもともと口下手で、気の利いたことも言えないし、
普段は口数が少なくて、たいして面白みもない女です。
不思議でしかありませんでした。
でも、とても幸せだと感じました。
こんなバカげた偽りの世界で、幸せなどと言ってくれる人がいるんだと、
心の底からありがたく思いました。
この世は、捨てたもんじゃないと思いました。
自分でも何が何だかわからないうちに、どんどん本指名が返ってくるようになってきました。
そして、入店から5か月ほどして、はじめて、
出勤日前日に、予約で満員御礼となりました。
わたしのいる店では、予約で満員御礼となる嬢は、
ナンバー3くらいまでの人気嬢のみ。
そこに、土日しか出勤しない、巨体の元・不人気嬢が食い込んできたのです。
人気とヒイキと叩きと
出勤日前日に満員御礼になってからというもの、店の待遇がビックリするほど変わりました。
お店は、キャストを平等ではなく、公平に扱います。
まともなお店だったら、「人気嬢の待遇はよくなる」ものです。
人気嬢がお金を運んでくるので、「ヒイキ」をされるようになります。
まず、わたしの接客当たりの単価が上がりました。
本指名が多くなると、追加でボーナスを頂けるようになるんです。
普通なら7000円のところ、同じ時間のお仕事で10000円いただけたり・・・
交通費が満額出るようになったりしました。
(通常、交通費は出ないお店が多いです。わたしは最終的には、車で出勤した場合は「駐車料金・高速代・ガソリン代」が実費で全額出るようになりました。列車の場合は通常各駅停車運賃だけのところ、特急料金も出ます)
お客様に対し「スタイルとか見た目とかにこだわらないのであれば」とオススメされるようになり、
送迎の車も相乗りがなくなり、専属のドライバーさんが付くようになりました。
他のキャストと相乗りの車だと、自分は仕事が終わっているのに、一緒にのるキャストが遅れてきたら、
遅れたほうに予定を合わせらせてしまいます。
専属の車がつけば、自分の仕事のみで時間のロスがなくなります。
相席にならないので、移動中も好きなことをしてくつろげます。
そして、
出勤時間のタイムロスがでないよう、
これまでだったら遠方へのデリバリーもOKだったところ、
完売嬢となったとたんに「市内、指定エリアのみOK」に変更されました。
どういうことかというと、
デリヘルは、移動時間は仕事の時間でないので、無給のため、
遠方へ行く場合は、車に乗っている時間が長かったら、1出勤あたりに仕事に行ける回数が減ってしまいます。
車に乗っている時間が少なければ、その分仕事にたくさん行けます。
不人気嬢だったら、どんなに遠いところに行ったとしても、ほかの仕事が入らないから、
時間がもったいないということにはなりません。
しかし、人気嬢だったら、仕事でデリバリーされるのが近くばっかりなら4回お仕事に行けたのに、
遠いところばかりだったら2回しか仕事に行けない、と、
稼ぎに大きく影響されてしまいます。
お客様が支払う代金は、大体嬢とお店で折半なので、
人気嬢の仕事が減る=お店のもうけが減る
ということになります。
しかし、わたしにはもっとすごいことが起こってしまいました。
1軒目と2軒目の場所が近くても、移動があるので、どうしても仕事の間に30分ほど時間がとられてしまいます。
その30分×数回すら惜しい
ということで、
このころになると、
お客様はひとつのホテルに集められ、
わたしは仕事が1本おわったら、そのまま別のフロアのお客さんのところに直行・・・
というパターンになっていました。
店が、わたしに1本でも多く仕事をつけようとしているのがわかりました。
辛かったのは、昼ごはんが一切食べられなくなったことくらいです。
休憩がないので、食事ができません。
その日の仕事を、同じホテルでこなして、事務所に帰る車に乗り込み、
ウィダーインゼリーやこんにゃく畑を食べていると、ドライバーさんが言いました。
「朱実さんさあ、お客さんにおねだりして、ホテルのゴハン食べさせてもらったらいいのに」
わたしは、こう答えました。
「そんなわけにはいかんですよ。お客さんは、私にごはんを食べさせるために呼んでるんじゃないし・・・
わたしのおなかが空いているのはわたしの勝手で、お客さんには関係ないからさぁ…」
精算するたび、入店時に店長から言われたことを思い出していました。
「うちの店は、こんな年代の人ばかりだから、
平均レベルのキャストで8時間待機で平均1~2本お客さんが付く感じね。
多くて2万くらいかな・・・
月に5~6回出勤で、15万もってかえりたいなら、
1日3万だよ。
1日4本、連日満員御礼を続けてできる数字だから・・・
あまり期待せずに淡々と、目の前のことをこなしなさい」
出勤ごとに3~4万を持って帰り、
精算の時にはほかの嬢から苦々しい目で見られるようになりました。
いつも、待機室に、仕事には不要な私物を置いて行っていたのですが、
手鏡や、化粧品のコンパクトが割られていたり、
タオルやメイク落としがなくなっていたり、
通勤の際履いてきたスニーカーのひもが切られていたり
(仕事の時には、ヒールのある靴に履き替えます)
冷蔵庫に入れておいた、「もどってきたら飲もう」と思っていた飲み物が、捨てられているようになりました。
出勤したとき、ほかの嬢とすれ違って挨拶しても、無視されることが多くなりました。
気づいた店長は、精算時、他の嬢がいない時間を見計らうようになりました。
そして、わたしの荷物は、スタッフルームで預かってもらうようになりました。
在籍して6か月目、ようやくわたしは1ヶ月に目標金額としていた15万円以上をラクに稼げるようになりました。
・・・がんばりましたよね^^
これで、養母の施設料金を払うことができる・・・・
だけど、このまま同じ金額を稼ぎ続けないといけない・・・
そのためには、何をすべきか。
わたしの体と顔は武器にならない。
頭を使うしかない。
きれいな女に勝つために、体も顔も持っていなかったら、
戦う武器は、頭と心しかない。
なにをしたら、この稼ぎが継続できるか。
そればかりを、考えていました。
平日は平日で、昼の仕事を必死にこなし、
この仕事も、全力でした。
(続きます)